テレビ東京の檀野氏に同社のキャッチアップサービスについてインタビューした前編(https://www.brightcove.com/ja/resources/blog/video-addict-vol2-tx-1/)に続く。後編では、同社のデータ分析手法や、常に業界初の取り組みを行う組織について語ってもらった。
團野 雄一郎
テレビ東京コミュニケーションズ株式会社
映像・データ事業部 テックリード
2007年テレビ東京入社。システム部を経て、制作技術部で様々な制作現場を経験。その後、テレビ東京コミュニケーションズ株式会社で映像配信サービスの技術リーダーを務める。2019年よりテレビ東京の配信技術部にて、映像配信技術を中心とした企画開発・技術戦略立案を担当。
## ファンを増やしたいなら、ユーザーの視点から物事を見なければならない。
**ブライトコーブ(以下、BC) 土屋** 先日、御社の堀さんにご協力いただき、アームトレジャーデータCDPを活用した事例を作成しました。御社のデータ活用の取り組みについてお聞かせください。
**テレビ東京の檀野さん(TX)** データの観点から言うと、以前はユーザーを追跡していませんでした。視聴率や完走率といった指標を使って、どれだけ映像が見られているかを見ていただけです。例えば、「この番組はネットで人気がある」などと番組単位で評価していました。テレビ東京のブランド価値を向上させることが目的なら、ファンを増やすというユーザー目線も必要でした。これは現在のブライトコーブのアナリティクスだけでは実現できないことなので、Google Analytics、Google Analytics for Firebase、Arm Treasure Data CDPを組み合わせて使っています。
**どのように使い分けていますか?
**TXダノノ**です:Googleアナリティクスはインターフェースが優れているので、シンプルな分析に使っています。Arm Treasure Data CDPは巨大なデータプールなので、SQLを書いてセグメント化し、そのセグメントが誰なのかを分析して、再度アプローチするために使っています。例えば、最近アプリをインストールしたけどまだ使っていない人をターゲットにするなど、様々なことのハブとして使っています。
分析の目的によって、Tableau、Re:dash、Google Data Studioなどを使い分けています。
## 会社の信頼を得る
**土屋BCは現在何人ですか?
**TXダンジョー** 協力会社を含めると、20人くらいいます。
**土屋**ある程度の人数になると、全員が同じ方向を向いて仕事をする、つまり檀野さんのようなユーザーオリエンテッドな考え方で仕事をすることが難しくなってきます。どのように育成・教育されているのか教えてください。
**TX団野** 正直なところ、開発や教育という点ではあまりできていませんが、私の考えに共感してくれる人を増やしたいと思っています。
放送局の配信事業には、まだまだ手をつけていない部分、整理できていない部分がたくさんあります。気づいたところは積極的に提案・改善をしていますが、私一人ですべてをできるわけではないので、より多くの人に参加してもらうことが大切です。なので、提案するときは、内容を説明するだけでなく、「なぜこれをしたいのか」「これをすることで何を実現したいのか」など、自分の考えを整理して関係者に伝え、理解・共感してもらい、議論を見ている人たちにも共感してもらうことで、より多くの人を乗せるようにしています。
**土屋BC なるほど。確かにどんな新しいプロジェクトも、團野さんのチームがボトムアップで実現しているように感じます。2017年に先駆的な取り組みとして実施された「世界卓球選手権」についてお聞かせください。SSAIの広告サーバーによる広告挿入と、テレビ放送とインターネット放送の同時配信を同時に実現した、日本でも新しい大型プロジェクトだったと思います。
## 裁判ができたので、事実をお返しします。
**壇上**さんそれまでは、テレビ放送の視聴率に悪影響を与える可能性があるため、放送が終わるまでサイマル配信ができないという状況がありました。しかし、影響があるかどうかはやってみないとわからない。
実際、視聴率への悪影響はなく、配信後のアンケート結果でも局のイメージアップにつながったという結果が出ているが、テレビ放送が本業である以上、実施前の不安や懸念はつきまとう。
しかし、私たちは不安や心配を払拭するために、常に多くの事実を作り出している。一度試させていただいたものは、しっかりとフィードバックすることが大切です。もちろん、関係者の協力を得るために、「ネット配信のおかげで口コミの評判がすごく良くなった」といったフィードバックも行っています。それを繰り返すことで、社内の信頼も得られるようになり、今では、少し前では考えられなかったような、テレビ放送前にネット配信を行うケースも増えてきました。
**先日のイベントに登壇されたMBSの中川さんも、そうしたチャレンジを支えるプロデューサーや関係者へのフィードバックが大事だとおっしゃっていました。
**TXダンジョー** そうですね。これは感謝の気持ちだけでなく、自分たちの仕事をやりやすくするという意味でも大切なことです。
## 我々の仕事はコンテンツの価値を最大化することだ
**土屋BC** 最後に、今後の抱負を聞かせてください。
**TX弾正** 私たちの仕事はコンテンツの価値を最大化することですが、現在は様々なプラットフォームやデバイスでコンテンツを体験できるようにすることで、技術的な側面から貢献しています。ただ、私たち自身の立場から言えば、極端な意味での純粋なエンジニアは必要ないと考えていて、最終的には技術を使って問題解決したり、技術的なアドバイスができる人がいれば十分だと思っています。
これまでは放送機器、情報システム、デジタル技術がそれぞれ独立した別組織でしたが、今は完全に統合され、境界線というものはありません。一つの技術組織、あるいは横断的な組織として一緒にやっていくことを目指しています。それぞれの組織が違う方向に歩いていて、足を引っ張り合っているケースもよくあると思います。そういうことをうまくマネジメントして、それぞれの組織の問題を解決し、同じ方向を向いて走っていきたい。
**BC土屋** テレビ東京の様々な組織で仕事をしてきた團野さんのキャリアが役に立つだろう!
**TX段野さん*** 会社が用意するキャリアパスもありますが、これからのテレビ局には、いろいろなことを経験し、特定の分野に足を置き、総合的に判断できる人材が必要だと思います。私も4月から人事部に配属になったので、そういう人材を育てるための新しい研修企画を実施したり、人に寄り添うマネジメントを実践していきたいですね。

業界において、新しい取り組みを次々と実現できる組織づくりについて、貴重な示唆を得ることができた。メディア業界だけでなく、スピード感を持って組織を動かし、プロジェクトを実現する方法としても参考になると思います。
次回のVideo Addictは朝日新聞の瀬戸口さんです。どうぞお楽しみに!
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インタビューを終えて
土屋__BC
Vol.2は、日頃から情報交換をしている檀野さんにお願いした。本当にいろいろなことを話してくれたので、本当は全部載せたかったのですが、限られたスペースのため、一部カットさせていただきました。インタビューからもわかるように、彼は多くの経験を積んでおり、さまざまな役割をバランスよくこなしながら、自然に前に進んでいく能力は、ジョブローテーションをかなり良いものにしているスキルだと思う。また、今回は触れられなかったが、海外視察やさまざまなコミュニティで活躍し、周囲にアウトプットする姿は、ビジネスマンとしてとても刺激になる。情熱的な人だ!