## ブランドの安全性とは?
ブランドセーフティ」とは、企業や商品のブランドを毀損するリスクをいかに回避するかという考え方と、そのための取り組みを指す。
ブランドセーフティは、一般的にインターネット広告などのペイドメディアとの関係で語られることが多い。しかし、人々がブランド・イメージから連想する対象はインターネット広告に限らず、アーンド・メディアやオウンド・メディアとの関係においてもブランド・セーフティは考慮されるべきである。
ブランドの安全性について考えるとき、考慮すべき主なポイントは3つある。
### 1.倫理
企業のコンテンツが公序良俗に反したり、反社会的勢力への資金提供につながったりする場合である。例えば、インターネット広告の場合、広告が表示される場所は多岐にわたるが、想定外の場所に広告が表示されると、広告主のブランドが毀損される可能性がある。保険金詐欺のニュース記事の中に生命保険の広告が表示されるようなケースである。
### 2.違法性
違法なコンテンツを掲載するサイトに、企業のコンテンツが掲載されること。例えば、著作権や肖像権、施設管理権などを侵害するコンテンツを掲載するメディアサイトに、企業の広告が掲載された場合です。
### 3.品質
これは、企業のコンテンツが他社のコンテンツと並んで表示され、その企業のイメージや製品・サービスのブランドイメージにそぐわなかったり、品質が著しく低かったりすることを指します。
## 動画に関するブランドの安全性とは?
では、動画がブランドの安全を脅かすケースとは?
テキストや写真に比べ、動画はライブ感があり、視覚や聴覚に訴え、コンテンツとして注目を集めやすいため、リスクを高める可能性が高いという特性がある。
### 1.倫理
広告主が意図しない形で反社会的勢力に資金を提供する可能性がある。具体的には、反社会的勢力が制作した動画に動画広告が表示され、広告主の広告費が反社会的勢力に還元されるケースなどが考えられる。
また、2013年頃から、社員がSNSに悪ふざけをした動画を投稿し、それが拡散されるという、いわゆる「おとりテロ」が繰り返されている。実際に刑事訴訟や民事訴訟に発展したり、企業の株価が急落したりするケースもある。
### 2.違法性
御社の動画が違法にダウンロードやアップロードされ、御社のイメージを損なうような使われ方をされた影響で、御社のブランドイメージが損なわれる可能性があります。
近年、「ディープフェイク」と呼ばれるAI技術を駆使して作られたフェイク動画も話題になっている。2019年6月には、フェイスブックのザッカーバーグCEOのフェイク動画が確認された。ディープフェイクがインターネット上で世界中に広がれば、企業が通常発信するメッセージと矛盾するフェイクメッセージで視聴者を落胆させ、ブランドイメージの低下や業績の悪化につながる可能性がある。
### 3.品質
動画の画質が悪かったり、再生時のレスポンスが遅かったりすると、視聴者はストレスを感じ、ブランドイメージを損ないかねない。今は多種多様なメディアがあり、短編コンテンツを次々と視聴する人も多い。視聴者がストレスを感じれば、別の動画に切り替えるか、動画の視聴をやめてしまう。
動画は視覚や聴覚に強く訴えるため、ブランドに対してネガティブな印象が形成されると、より強く記憶に残ることになる。また、ブランドの動画でネガティブな体験をしたユーザーの23%が、その企業の製品の購入をためらうという調査結果もある。
映像対策を実施する際には、ブランドの安全性により配慮する必要がある。
## ビデオブランドの安全性に関する最新動向
動画配信プラットフォームを中心に、10年以上前から発生している動画にまつわる事件。2019年の動画にまつわる事件と、大手SNS各社の対策をみていこう。
- あるビデオブロガーが、小児性愛者がYouTubeを使って情報交換をしているとの問題を提起した後、ネスレ社とマクドナルド社はYouTubeからの広告を取り下げた。
- ツイッターは現在、収益の半分以上を占める動画広告の広告主から、ブランドの安全性とプレミアムな品質を求める要望を受け、プロトコルを含めた環境整備やコンテンツ面での提携拡大に取り組んでいる。
- Facebookは、動画広告ネットワークベンダーや広告主からの要望に応え、Facebook動画広告用のブランドセーフティAPIツールを開発している。
上記のようなインシデントが発生するたびに、動画配信プラットフォームやSNSは対応を強化している。しかし、リスクを完全に排除することは難しく、また新たな問題も発生し続けるため、インシデントが完全になくなることはない。ペイドメディアやアーンドメディアでは、企業が動画を公開する環境を完全にコントロールできない現状がある。
## ブランド毀損を避けることの重要性とその対策
ブランド価値の毀損がもたらす影響は甚大であり、インターネットで瞬時に世界中に情報が発信される時代にあって、その影響は日本市場だけにとどまらない。
ブランドの安全性が損なわれることによる機会損失を最小限に抑えるためには、特に影響の大きい動画対策については、事前にチェックし、対策を実施することが必要です。
動画を最大限に活用するためには、ペイドメディア、アーンドメディア、オウンドメディアを目的に応じてバランスよく使い分けることが重要です。例えば、動画広告であれば、できるだけ出稿先を厳選できる手法を選ぶことが重要です。SNSであれば、管理しているアカウントの監視フローや、リスクのあるコメントが投稿された場合の対応フローを作り、運用することが必要です。企業サイトであれば、ブランドイメージを高める動画の効果的な見せ方を検討する必要がある。
この機会に、各媒体におけるブランドの安全性を考慮しながら、御社の動画戦略を見直してみてはいかがだろうか。