Video Addict Vol.6では、アメリカンフットボールの動画メディア「American Football Live by rtv」を運営し、関西を中心に小規模な地域スポーツの配信も行っているrtvさんにお話を伺います。rtvは2012年に関西学生アメリカンフットボール連盟と共同でリーグ戦の公式ライブ配信を開始して以来、アメリカンフットボールだけでなく様々なローカルスポーツのライブ配信事業を手掛けています。なぜ、これまで大手メディアが取り上げてこなかったスポーツの映像配信を手がけるのか。同社の須澤代表取締役に聞きました。
須澤 創太
rtv株式会社
代表取締役
1989年長野県生まれ。立命館大学映像学部卒業。放送機器メーカー営業、教育・経営コンサルティング分野のベンチャー企業を経て、株式会社rtvを設立。現在、「テレビでは放送できないこと、大手メディアではできないこと」をコンセプトに、アメリカンフットボール団体と共同開発したバーティカルメディア「American Football Live by rtv」の運営をはじめ、スポーツ団体、テレビ局、スポーツ用品メーカーと連携し、コストパフォーマンスを追求したライブ中継の企画・制作・SNSマーケティングを手掛け、地域スポーツや地域文化の発展を支援するプロジェクトに携わっている。
## ♪ 子供の頃から "ものづくり "が好きだった
**ブライトコーブ(BC)の土屋です:まず、土屋さんの経歴について教えてください。
**rtv須澤さん**:小さい頃から「ものづくり」が好きで、機械いじりや電子工作が好きでした。中学生の頃から学校に行くのがあまり好きじゃなくて、高校も行くのが嫌だった時期がありました。
当時、放送部の顧問をしていた先生から「高校は楽しくないかもしれないけど、機材やものづくりに興味があるなら放送部に入らないか」と誘われた。県内では有名な部活で、NHKの高校大会で賞を取ったりしていたので、興味があって入部しました。それで放送や番組制作、映像に携わるようになりました。
放送部と聞くと校内放送のようなものを想像するかもしれませんが、番組制作は高校生目線でドキュメンタリー番組を制作してコンテストに応募するなど、かなり本格的なものでした。いろいろなところに取材に行ったり、深夜や早朝まで撮影した映像を編集したりと、高校生にはハードな仕事でしたが、地元の魅力を表面化させる作業は楽しかったし、取材先の人たちが純粋に喜んでくれるのがうれしくて続けました。
**土屋**さんが高校時代から放送に携わっていて、地元で注目されていたとは驚きです。
**rtv須澤** 地元で起きていることや、主要メディアが取り上げないようなことを、映像を使って自分なりに表現できるのが面白いと思いました。
進学した立命館大学では映像学部で映画を専攻し、放送部にも入りました。4年生になった頃、ニコニコ動画やUstreamといったサービスが流行り始めました。大学のカリキュラムや授業では映像ビジネスや配信とはあまり関係なかったのですが、これらのサービスを使えば、主要メディアが取り上げないような学内のローカルスポーツやイベントも配信できると思い、独学で映像配信を始めました。当時はお金もなかったので、カメラなどの機材はオークションサイトで中古品を購入し、民生用のHDDデッキを使って映像を再生したりスロー再生したりと、学生なりに試行錯誤を繰り返しました。機材も予算も限られていましたが、その中でできることを追求し、映像の中身にとことんこだわったコンテンツを届けたいと思っていました。
## 同時視聴者数2万人、味を占めた(笑)。
**rtv須澤さん** ちょうどその頃、立命館大学アメリカンフットボール部がリーグ戦でプレーオフに進出したものの、テレビ中継がないことを知りました。そこで、チームから生中継の依頼があり、Ustreamで初の生中継をしたところ、同時視聴者数が2万人になり、味を占めました(笑)
**時代が違うとはいえ、今と比べても同時視聴者数2万人はすごい。
**rtv須澤さん** 視聴者の数よりも、そうでなければ見られないコンテンツを、こういう形で世の中に届けられるというところに、ライブストリーミングの可能性を感じました。
**土屋さんの高校時代のローカルドキュメンタリー制作の原体験が、当時の最先端の動画配信技術を使ったアメリカンフットボールのライブ配信に置き換わり、rtvの設立につながったわけですね。
**rtv須澤さん**そういう経緯なんですが、大学卒業後、独立する前にマスプロ電工という会社に就職しました。実社会で働いた経験もないまま起業するのはまずいと思い、そう決断したのですが、半年後に別の会社にスカウトされ、すぐに退職しました。2社目は経営コンサルティングのベンチャー企業で3年間働きましたが、入社当時からrtvの前身である「リコネクト・テレビジョン」の立ち上げも行っていました。
**土屋BCは、当時勤めていた会社と何か問題はありましたか?
**rtv須澤さん*** 私が勤めていた2社目の社長は、起業家支援に携わっていたこともあり、私たちの活動に理解を示してくださり、通常業務(月~金)に支障がなければ問題ないと言ってくださいました。そのため、一般社団法人リコネクト・テレビジョンの活動も、設立当初は土日限定だった。しかし、リコネクト・テレビジョンの活動は徐々に重要性を増し、最終的にはリコネクト・テレビジョンの活動のみに特化するようにシフトしていきました。2018年に「株式会社rtv」に移行しましたが、一般社団法人リコネクト・テレビジョンとしては現在8期目です。
## ライブストリーミングを通じて、ゼロからイチを生み出すビジネスを目指したい。
**BC土屋** rtvは、映像制作というより、インターネット上のライブストリーミング技術や知識に長けている会社のようですね。どのような会社を目指しているのですか?
**rtv須澤さん** 映像制作やライブストリーミングサービスのご依頼をいただくことも多く、もちろんスポーツ以外のストリーミング技術サービスも提供していますが、企業としての最終的な目標は、単に技術を提供することではありません。技術に興味はありますし、技術力が上がればできることの幅も広がりますが、会社として目指しているのは、地域のスポーツやコミュニティの価値を高め、新しいファンを増やすことです。
まずは、オンデマンドやライブ配信、SNSなどを通じてファンを増やす方法を、スポーツ団体やチーム、メディアと一緒に考えていきたい。カジュアルなファンとコアなファンが増えることで価値が高まり、マネタイズ戦略もおのずと生まれてくると考えています。
**BC土屋 なるほど。今までにない動画配信を行うことで、地域スポーツのファンや注目度を高め、地域活性化につなげようということですね。
**須澤さん**そうなんです。大手メディアのように10を1000にするのではなく、0を1にするプロジェクトに特化していきたいと考えています。事業としては、スポーツメディアのプロモーションがメインです。インターネットメディアを使って、地域スポーツを盛り上げ、ファンを作っていくことが使命です。
これで前編は終了。須澤さんの地域スポーツ、地域振興に対する熱い思いがひしひしと伝わってくるインタビューだった。後編(https://www.brightcove.com/ja/resources/blog/video-addict-vol6-rtv-2/)では、rtvのビジネスについて語っている。