ライブ配信で考慮すべき技術とマーケティングのポイント:皆既日食の事例

ライブ配信で考慮すべき技術とマーケティングのポイント:皆既日食の事例

私は宇宙にずっと魅了されてきました。小学校 3 年生で惑星とその運行について教わって以来、すっかり夢中なのです。そのころ、私は暗闇で光る星座の本に心を奪われ、毛布の下で夜遅くまでその本を読みふけったものでした。それから数年後、公園で初めて日食を見たことを覚えていますが、こういうことは誰にとっても忘れられないものだと思います。ですから、地球の裏側で起きる珍しい日食のライブ中継にブライトコーブのテクノロジーが使われたと聞いてとても嬉しかったです。

しかしエクスペリエンスとしては有効だったのでしょうか? 動画によるエクスペリエンスをとても重要視するマーケターとして、私は自問せざるをえませんでした。日食を体験するということは、どういうことなのか? それはオンラインで可能だろうか? そしてオンラインの動画テクノロジーはどうやってそれを可能にするのか? と。嬉しいことに、私の予想は覆されました。そしてこのプロジェクトについて詳しく知るほどに、その規模の大きさに驚かされました。

その理由をお教えしましょう。つい最近、サンフランシスコにある体験型博物館エクスプロラトリアム(Exploratorium)のオンラインメディアグループ プロジェクトディレクターの Rob Rothfarb 氏に話を聞く機会を得ました。Rob は、エクスプロラトリアムの教育でのミッションや、多角的なコンテンツ認知戦略と多層的な動画テクノロジーとテストを通じてそのミッションがどのように実現されているかを話してくれました。世界各地で、そしてあらゆるデバイス(ライブ動画ストリーミングが可能なアプリも含む)上で、まったく新しいオーディエンスが珍しい皆既日食を見たのです。

インタビューを読んで、次のイベントのヒントにしましょう。


Photo courtesy of the © Exploratorium

Shannon:ライブイベントがどのようにエクスプロラトリアムの認知度向上につながるのか、詳しく教えていただけますか。

Rob:当館では活発な Web キャスト プログラムを実施しており、1998 年から特に力を入れてきたのが世界各地で発生する皆既日食のライブ画像を配信するという試みでした。日食のような自然現象を体験してもらう支援をすることで人々の好奇心を刺激し、自ら観察をしたり、本当の皆既日食を体験したりできるようになることを狙っています。当館では、この配信を NASA の支援による教育ミッションの一部として提供しており、今年の日食についてはアメリカ国立科学財団(National Science Foundation)の支援も受けました。

皆既日食のダイナミックなライブビューに加え、当館では認知度向上のための教育的コンテンツも制作しました。このコンテンツでは、なぜ日食が起きるのか、どのように起きるのか、天体力学はどのように作用するのか、といった質問に答えています。さらに、皆既日食を見に訪れた地域の文化的な側面についても少しだけ扱っています。

Shannon:素晴らしいですね! 今回の日食についてはどのように宣伝しましたか? 教育パートナーシップを通して行ったのでしょうか?

Rob:告知は主に当館の Web サイトで行っており、ミクロネシアに人を派遣して日食を撮影することをお知らせしました。また、NASA やニュースメディアとも協力し、このプログラムを利用してもらえるようにしました。ABC や L.A. タイムズをはじめとする多くのメディアや、天文関連の Web サイトやサンフランシスコ発のブログメディアなどで取り上げられました。このプログラムはインターネットで配信しましたが、一部のパートナー向けに衛星でも配信しました。NASA TV や、AP 通信などのニュース配信社はこの衛星配信を通じてニュースにしていました。また、セカンドライフ(Second Life)の 3D 仮想世界には Brightcove を通してライブ動画を配信しました。セカンドライフでは日食の鑑賞イベントを 2 つ開催し、一緒に日食を見ようと世界中からアバターが集まりました。

また、ブログや Web サイトにライブ動画を埋め込むことができるようにしたところ、多くの人がこれを利用しました。実は、このようなストリーミングを通してライブを観た人の方が、当館 Web サイトで観た人よりも多かったのです。興味深い結果でした。


Photo courtesy of the © Exploratorium

Shannon:なるほど、貴重なコンテンツを壁を設けずに提供するというのは賢明ですね。では、このように掘り下げ方も規模も大きな動画キャンペーンの企画において、どのようにして様々なチャンネルでの露出を促進するのでしょうか?

Rob:このプログラムを、一般の人々と特定の教育関連オーディエンスとの両方に確実に届けたいと考えました。そのため、多角的な戦略をとりました。一般オーディエンスへの情報告知にはソーシャルメディアや当館の一般向け Web サイトを利用しましたが、何百もの博物館や教育関連パートナー機関にも連絡し、それぞれが独自の教育プログラムを制作するために利用できるライブ配信を提供することを知らせました。実はこれが重要なことで、当館が提供するライブフィードを使って、他の教育機関でも一般向けの公開プログラムやオンラインプログラムを制作してほしいのです。

Shannon:これからライブ配信を始めたい人に、イベントを最大限に活用するためのアドバイスはありますか?

Rob:重要なのは、情報を流すことだと考えます。

私たちは他の Web サイトやブログでライブストリームを埋め込み、それに関連した独自の記事を作成できるようにしました。さらに、「コンピューター上で見ているだけでなく、自宅のリビングで日食鑑賞のイベントやパーティを開催しよう」とか、「動画を自宅のテレビで見よう」、「モバイルアプリを使って外出中でも日食を見たり、他のもっと見やすいデバイスに送ったりしよう」といったメッセージも送りました。どんな選択肢があるかを知らせる必要があるのです。

今回の皆既日食は発生場所のせいで欧米のニュースではあまり報道されず、その意味では少し「忘れられた日食」のようでした。ですから宣伝は非常に重要だったのですが、コーディネートとロジスティックもまた不可欠でした。制作クルーに現地に行ってもらい、配信の背後でのコミュニケーションを確立することがカギでした。配信の背後にあることをエクスプロラトリアムに知らせることで、現地で何が起きているかを知り、配信をコーディネートできるようにしたのです。また、オーディエンスに、舞台裏で起こっていること、つまり、地球の裏側にある望遠鏡のライブイメージをオーディエンスが見ている画面に映し出そうとしている様子を意識してもらうことも、私たちが意図したことの一部でした。そこでライブ配信の詳細を伝えるコンテンツも制作し、当館のブログや Web でシェアしました。


Photo courtesy of the © Exploratorium

Shannon:そうですね、ミクロネシアの離島であるウォレアイ島で衛星へのアップリンクフィードを設営し、世界的な視聴に適した Web フレンドリーなフィードに変換するところを撮影した動画がありました。なかなかの偉業です。技術的なロジスティックについて簡単に紹介いただけますか?

Rob:通信機材や望遠鏡、そして望遠鏡から入る光の信号を動画に落とし込むメカニズムなど、何層にもわたる難しい課題がありました。設置は困難でしたが、衛星による中継は完ぺきでした。インターネット中継では、特にエンコーディング、つまりエンコードする際の形式、解像度、ビットレートに重点を置き、カスタマイズした動画プレーヤーもストリーミングに合わせて公開し、さらにすべてきちんとテストをしておきました。複数のテストウィンドウを用意し、全体のリハーサルをするために衛星の使用時間も余裕をもって確保しました。これが本当に重要なところです。

動画のエンコーディングと、Akamai経由でのブライトコーブのクラウドへの送信には Encompass を利用しました。ブライトコーブの協力で、すべてのレンディションのテストを行い、必要なプログラムの作成にはメディア API を使用しました。また、ブライトコーブのさまざまなプレーヤーを使い、これを私たちの仕様に合わせてカスタマイズするのにはかなりの時間を費やしました。メインプログラムにはライブのクローズドキャプション(音声字幕)を付けましたが、これにもセットアップとテストが必要でした。

Shannon:ライブ配信で Brightcove を利用したのは今回が初めてだったのでしょうか?

Rob:私たちは 2011 年から Brightcove を利用していますが、2008 年以来皆既日食はありませんでした。当時、それも放送はしましたが。ですから、今回は Brightcove を利用して配信した初めての皆既日食でした。皆既日食というのは、何年かに一度、2 回ずつ発生する傾向があります。2012 年には、Brightcove を使って珍しい惑星食のライブ配信を実施しました。このときは金星の太陽面通過でしたが、その様子を6時間半にわたって中継しました。これは素晴らしいもので、大成功でした。

Shannon:ライブイベントは終了しましたが、ライブ動画コンテンツをどのように再活用していますか?

Rob:当館のモバイルアプリには、膨大なオンデマンド ライブラリーがあります。3 時間の配信の全編をアプリで視聴することができますし、Web サイトや、私たちが作成した日食に関する教育動画でも見ることができます。また、過去の日食遠征をすべて集めたアーカイブも作っています。ですからアプリと Web サイトは非常にアクティブな情報源となっています。

実際に日食が起きたのは 3 月 8 日から 9 日にかけてのことですが、オンラインでは 3 月末から 4 月中旬までにかなりの回数の動画視聴がありました。今でも、この動画コンテンツを見つけてアプリや Web サイトから視聴するユーザーがいます。テールが非常に長いといえます。また、日食イベント後の一月半にわたって動画プログラムのすべてをエクスプロラトリアムの Web キャストスタジオで特集しました。

私たちは 2017 年 8 月 1 日に発生する次の皆既日食への期待を高めるために 2016 年の日食を利用しています。2017 年の日食では月の影が直接アメリカ本土を端から端まで通過するので、何百万人もの人が自分の目で日食を見られるのです。その時もまた、Web サイトやモバイルアプリでのライブ中継を計画しています。


Photo courtesy of the © Exploratorium

Shannon:コンテンツの視聴者の感情的な視点からの反応についてはどのように感じていらっしゃいますか? どんなリアクションがあったか少し教えてください。

Rob:素晴らしいものです。皆既日食を見た人たちは、たとえライブ動画を通したものであっても、とても感動します。

自然現象の発生というドラマを本当の意味で見ることができるよう、できるだけ高品質な動画配信をすることに注力しています。太陽のコロナや噴出するプロミネンスのような特徴、あるいはストリーマーと呼ばれる太陽から放出される光や黒点(私たちの Web キャストで見ることができます)は、とてもダイナミックなものです。

今回の日食で私たちが力を入れたことの一つは、ミクロネシアの人々がこの現象をよく理解できるように手伝うことでした。そこで、日食が起きる前にフィールドチームが現地の学校で教育的なアウトリーチ活動を何度も行いました。日食を安全に観察できる日食メガネを配布し、なぜ日食が起きるのかを説明しました。彼らは日食について楽しんで学び、日食自体も楽しみました!


Photo courtesy of the © Exploratorium

Shannon:それは素晴らしいですね。技術がこれを可能にしたわけですが、実際の人々へのインパクトを理解するのは、最も興味深いことだと思います。

Rob:エクスプロラトリアムでは、日食のあった夜にもプログラムを開催しました。900 人ほどが集まり、オンラインでのライブ中継と同時に館内でライブ配信を鑑賞しました。参加者はとても感激し、盛り上がり、そして日食が進むのを見て興奮していました。

ソーシャルメディアを用いて会話を追跡しましたが、とても感情豊かな反応があるのがわかりました。特に日食が起きた地域で顕著でした。彼らは自分の経験を共有できることを喜んでいました。当館の Web サイトやモバイルアプリ上で、ライブ動画の横に埋め込んだ Twitter のタイムラインで日食についての会話が進んでいくのは、見ていてとても素晴らしいものでした。ライブストリーミングにソーシャルメディアを追加することで、視聴者のエクスペリエンスをもう一歩先に進め、バーチャルに日食を観察している他の人たちとのつながりを作り出すことができたのです。

[インタビュー終わり]

このプロジェクトは、始めから終わりまでまったく驚くべきものでした。遠隔地でのライブイベント、多様なデバイスとアプリ上でのそのイベントのライブ配信、衛星を使った視聴イベント、そしてメディアやコミュニティーでの情報発信にソーシャルなインタラクションやリアクション。目には見えない技術的要素がシームレスに働き、これらのオンライン動画を通じた特筆すべきエクスペリエンスを可能にしたのです。Rob 氏率いるチームが Gold GLAMi Award(元 Best of the Web Awards)を受賞したのも当然です。

ミクロネシアの子どもたちは、きっと初めて見た日食を忘れることはないでしょう。そして地球の裏側で見ていた人たちにとっても、忘れられない体験になったことでしょう!たとえ Rob Rothfarb 氏やエクスプロラトリアムのような技術的経験がなかったとしても、次のビッグイベントにライブ配信を活用したいと思っているマーケターの皆さんに役立つ教訓はあります。本物のエクスペリエンスを作り出すためには…

  1. ライブ配信を広範囲に埋め込んで利用可能にすることで、実世界とオンラインのコミュニティーを融合させましょう。
  2. イベントの舞台裏をのぞけるような、おまけコンテンツを事前に制作しましょう。
  3. ソーシャルメディアやオンラインコミュニティー(例:セカンドライフ)で交流したり、コンテンツの宣伝をしたりしましょう。
  4. オンデマンドでライブイベント動画を見られるようにして、イベントの寿命を延ばしましょう。