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マルチチャネルの視聴・行動データを透過的に管理するプラットフォームで明確な視聴者像をつかむ

グローバルな実績を評価

デジタル時代にふさわしい先鋭的で総合力のあるメディアグループを目指すテレビ東京は、放送業であり、コンテンツ企業でもある。地上波放送、BS放送、CS放送、そしてネットやモバイルといった、あらゆるメディアに映像コンテンツを提供。ライバル局にはないエッヂの効いた視点が、さまざまなセグメントの視聴者から好評だ。

コンテンツのWeb配信にも積極的だ。コンテンツを資産ととらえ、その収益と視聴を最大化したいと考える同社は、自社が運営する複数のサービスに加え、民放公式テレビポータルTVer(ティーバー)にも人気コンテンツを提供している。

2013年、動画のWeb配信に広告を差し込むニーズがもたらされた。広告主が、あるバラエティ番組の見逃し配信サービスに出稿したいと名乗りを上げてくれたのだ。テレビ東京コミュニケーションズ 動画・データビジネス部 堀 龍介氏は、「当時、広告モデルでビジネスを展開するための動画配信プラットフォームは使用していませんでした。広告を柔軟に差し込みながらサービスを運用するためには優れた仕組みが必要で、グローバルな実績を評価し、Brightcove Video Cloudを採用しました」と話す。同社のBrightcove活用はここからスタートすることになった。

共通基盤でスポーツ中継のライブ配信も

最初のプロジェクトは、動画広告モデルが広告主にとっても魅力的なサービスで、ビジネスとしてこの分野が成立することを明らかにしてくれた。その後の展開は急速だった。2015年4月に見逃し配信への広告差し込みは5つの番組が対象になり、同年末には10番組へと拡大。その後も増え続け、現在は月間50 ~ 60番組が対象になっている。

Brightcove Video Cloudは、ライブ配信との親和性も高く、いくつものライブ配信を行っている。中でも2016年に開催された世界卓球マレーシア大会のオンラインライブでは、Brightcove LiveSSAIを利用し、ライブ配信と柔軟な広告挿入を実現。初めての大規模配信を成功させることができた。

さらに、2017年から、サブスクリプションモデルで提供するアニメの定額見放題サービス「あにてれ」も共通のプラットフォームを通して提供することになった。採用後、約6年。Brightcove Video Cloudは大きなトラブルを起こすことなく、守備範囲を拡大しながらテレビ東京のコンテンツWeb配信を強力にサポートしている。

Brightcove Video Cloudを利用することで、視聴者の状況が手に取るようにわかるようになった。Brightcove Playerを通すと、コンテンツが「いつ、何回、どの程度、どのWebサイトで視聴されたか」といった精緻な情報を得られるのだ。このユーザー行動データは番組作りにおいて重要な示唆を提供してくれるだけでなく、スマホアプリの最適なユーザーインタフェース設計などにも生かされている。

視聴データをマーケティングに生かす

一方、テレビ東京は民放各社共同のコンテンツ配信サービスなどにもコンテンツを提供している。そして、こうした配信では完全な視聴データは取得できない。無料のYouTubeチャンネルは低コストに運用できるツールだが、ユーザーデータを取得して自らコミュニケーションすることはできない。さらに、これらの視聴データとWebサイトを訪れてくれた人たちの情報を組み合わせて、デバイスレベルで分析したいというニーズが出てきた。

堀氏は、「視聴者属性や視聴データをより正確に取ることで、広告主様にとって本当に価値のあるマーケティング活動のお手伝いをできていることを証明できます。最終的には、広告主様が規定したデータをベースとしたカスタマージャーニーの一部を私たちのコンテンツが担うような形にもっていけるのではないかと考えました」と話す。

そこで、2016年にARMトレジャーデータのCDPを採用し、あらゆるチャネルから得られたデータをすべてCDPに蓄積し、名寄せする取り組みを開始。少しでも精緻な情報を得るために、工夫してデータを取得するようにした。たとえば、外部サービスを通して配信する場合、一時停止や再開などの視聴者行動を明確につかむことはできないが、そのコンテンツに広告を差し込む広告配信サーバは自社のものを使っている。そこで、広告配信が実行されたタイムスタンプから、コンテンツを視聴する視聴者の行動をある程度把握できるような仕掛けにした。同時に、Webサイト訪問者の行動ログもCDPで名寄せした。

蓄積されたCDPの情報は、視聴者像を把握することに役立った。「ガイアの夜明け」、「カンブリア宮殿」、「未来世紀ジパング」は同社の誇る経済番組だが、その視聴者属性はかつて想像でしかなかった。「管理職のビジネスパーソンが多いだろう」という読みはあったが、それを証明する術はなかったのだ。しかし、CDPを活用したことで、まずは40-50代の男性が多いという傾向が把握できた。さらに深堀するために、外部データベースと照合したところ、視聴者の6割が課長以上の役職者で、社長が14%、役員が7.8%という定量的なデータを得られた。これは、広告営業に生かされ、経済番組に配信できる「経済プレミアムパッケージ」という動画広告商品はほぼ満稿の状況が続いている。

新たな取り組みもスタートさせる計画だ。Brightcove SSAIのターゲティング広告配信機能の活用である。堀氏は、「まずは、性別と年齢だけのセグメントでスタートする方向ですが、将来はよりパーソナライズした広告配信も検討しています。すでに、技術的な要件はクリアできていますから、タイミングを見て始めることになるでしょう」と話している。

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