映像コンテンツや映像配信サービスの利用者が急増する一方で、コンテンツホルダーによる著作権侵害などの問題が顕在化している。そこで注目されているのが、「DRM(Digital Rights Management)」と呼ばれるコンテンツ保護技術だ。今回は、動画配信においてDRMが必要とされる背景について解説する。
#動画配信において著作権侵害からコンテンツを守る技術、DRMとは?
DRMとは、Digital Rights Managementの略。著作権などのコンテンツ保有者の権利が侵害されるのを防ぐために、コンテンツの使用や複製を制限するシステムの総称である。
コンテンツを権利侵害から守るためのアクセス制御技術や、コンテンツの利用・複製・改変・配信の制御やそのポリシーなどに用いられる。あまり一般的な言葉ではないが、近年急速に普及しているNetflix、Amazon Prime、HuluなどのOTTサービスや、電子書籍のダウンロード時に利用される比較的身近な技術である。
DRMはすべてのデジタルコンテンツに使われている技術なので、ビデオだけでなく、音楽、オーディオ、電子書籍、PDFなどにも使われている。
## なぜDRMの必要性が高まっているのか?

DRMはDVDやブログでは以前から使われていた技術なので、目新しいものではない。もともとDRMは、ライセンス管理が厳しいハリウッド映画を扱うメディア関連企業が、動画配信で広く利用している技術だった。しかし、近年、eラーニングやOTTサービスの急速な普及に伴い、動画配信が一般化し、動画コンテンツのセキュリティや権利保護に対する注目が高まったことで、DRMの利用を検討するコンテンツホルダーや企業が急増している。
例えば、有名なOTTサービスの多くはDRM技術を利用しており、DRMを利用することで、映像コンテンツの利用、複製、改変、配信を制御し、著作権を保護することができる。
このような背景から、DRMはメディア業界で広く利用されていた技術であったが、新型コロナウイルスの蔓延による映像コンテンツ需要の急増や、これまでクローズドな場で行われていたセミナーや研修をオンライン化する企業の増加により、メディア以外の業界からもコンテンツを侵害から守るという観点からの問い合わせが増えている。
例えば、製薬会社が開催する医療関係者向けセミナーや、投資ノウハウを有料で教える金融セミナーなどの映像コンテンツが違法にコピーされ、配信されれば、機会損失や情報漏えいにつながりかねない。
以上のような状況において、DRMは映像コンテンツを保護するためにコンテンツホルダーが検討すべき施策である。詳細は次回のコラムで紹介するが、他のコンテンツ保護方式と根本的に異なる重要なポイントがある。それは、コンテンツを再生する前に、DRMライセンスサーバーがリクエストを承認しなければならないことだ。つまり、正しい手順でライセンスキーを取得しない限り再生は不可能であり、高いセキュリティを提供することが可能なのである。