Apple と Comcast:正反対な両社がたどる運命は?

Apple と Comcast:正反対な両社がたどる運命は?

Apple と TV -この 2 つが同じ文脈の中で語られると、IT・メディア業界のウォッチャーの注目の的になります。今回は私たちが首を長くして待ちわびている Apple TV そのもののニュースではありませんが、Apple が Comcast とストリーミング分野で交渉中という噂は、当然のことながら多くの関心を集めています。ただこの情報をすでに「確定したこと」とみなしたり、業界再編の起爆剤になると考えたりするのはまだ早計です。

例えば、Will Richmond 氏は VideoNuze の記事で、Apple をこれまで突き動かしてきたのは常に品質であり、価格ではないと指摘しています。有料 TV にまつわる不満の多くがコストに集中するなか、Apple が Apple/Comcast によるハイブリッドモデルの差別化をどのように図るのか明らかではありません。また Motley Fool は、Apple の定評ある超一流のカスタマーサービスと Comcast の二流の顧客対応は相容れないと述べています

この点では私たちもこのニュースに当惑しています。理由は次の通りです。

この提携交渉が実り、世間一般の予想が現実になったとしたら、そのモデルは一気通貫を是としてきた Apple のこれまでの iTunes 戦略と矛盾することになります。iTunes はプレーヤーであり、メディア(コンテンツ)のオンラインショップであり、ソフトウェアでもあります。iTune を武器に Apple は、一流のコンテンツとテクノロジー、そしてパブリッシャーと消費者がともにウィンウィンになれるデジタルショップを融合するという考え抜かれた戦略を遂行してきたのです。

今回の交渉も外見は同じに見えますが、DirecTV ならびに Comcast/Time Warner Cable の買収の時と同じ課題にぶち当たっています。それはアクセスです。iTunes で Apple は配信プラットフォームを押さえていました。デジタルミュージックは容量が小さく、ブロードバンド回線はあれば便利ですが、不可欠な要素ではありませんでした。エンターテインメント・コンテンツが SD・HD、そしてじきに 4K となるなか、デジタル動画を左右するのはプレーヤーであり、(レンタル)ショップであり、アクセス、すなわち消費者へのパイプです。

Netflix をはじめとする OTT 事業者は認識していますが、市場を牛耳っているのは有料 TV 事業者(特にケーブル TV 会社)です。消費者が契約を解除したとしても、ブロードバンド回線用の契約をこの有料 TV 事業者と結ぶ必要があります。

Apple と Comcast の提携に関する技術的な側面を 1 つあげると、消費者に対する Apple のコンテンツ配信の優先順位をつけることです。具体的にはコンテンツの質を高め、バッファリングをなくし、待ち時間を最少化する、といった事柄のどれを最も重要視するかです。この点は本質的に先ごろ締結された Netflix と Comcast のピアリング契約と同様、特別な「マネージドサービス」として扱われると見込まれていました。しかしながら、動画エクスペリエンスの最大化に向けてこれらのアレンジが必要な点、ならびに Apple と Netflix 両社(加えてその他のネットワーク事業者)を判断するのは消費者エクスペリエンスである点を考慮すると、根本的にはプレイごとに課金する「pay-to-play」モデルとなります。

このアクセスの問題以外にも、この提携の主役である「消費者」に関する質問が残っています。Apple は「上質な」ユーザー・エクスペリエンスで定評ありますが、そのために Comcast が数々のイノベーション(X1/X2、RDK など)を棚上げすると考えるのは短絡的です。加えて、ユーザーが iTunes の ID 情報を使用することを Apple は希望しているという報道もあります。TV Everywhere では、MVPD 以外のログイン情報(社会保険番号など)の使用が議論されています。この点は消費者と直接関わる点のため、Apple と Comcast、どちらの巨人にとっても譲れない一線です。

業界の大手プレーヤーのなかには、この提携交渉を注視している企業もあります。

  • Amazon と Google -- 両社ともにストリーミングビジネスへの参入を表明しており、この Apple と Comcast の交渉を注意深く見守っています。この分野では、(限定的に Fiber を開始した)Google だけが Comcast が展開する配信事業に対する現実的な代替策を有していますが、家庭への普及率の点では及びません。
  • Verizon、ならびに Sprint とその合併候補である T-Mobile をはじめとするワイヤレス事業者 -- これらの企業はこのニュースを新たな機会と捉えています。家庭内の有線ネットワークに代わって、コスト的にも手ごろなワイヤレスのネットワーク構築が技術的に可能になれば、将来同じような提携案件で Comcast を負かせる立場に躍り出ることができるでしょう。

皆さんは Apple と Comcast の提携話をどう見ますか?コメントをお待ちしています。