あいまいな境界線:英国の無料放送局が有料 TV に進出する訳は?

あいまいな境界線:英国の無料放送局が有料 TV に進出する訳は?

TV とインターネットという相反する世界がもたらすメディアの「ビッグバン」は今もなお活発な動きを続けています。Netflix から MicrosoftBBC まで、ウェブ TV サービス用に高品質なオリジナル プログラムを制作しているどの会社にとっても、一番重要なのはコンテンツです。しかし、IPTV によるエンタテインメントへの流れを売り上げの最大化につなげるには、消費者の信頼と効果的なマネタイゼーションがカギとなります。

コンテンツは消費者獲得バトルにおける最も重要な要素であることが証明されつつあります。そして、このことが英国の有力放送局の有料 TV 分野への進出を促しています。この放送局は「最も多くの人が視聴して、最も高い人気を誇り、そして最も話題に上る無料および有料チャネル」になることを目指しています。

この放送局は人気シリーズ「Downton Abbey」を放映した英国の無料放送局「ITV」で、同局はこのほど新たな有料チャネル「ITV Encore」を近々立ち上げることを発表しました。同チャネルでは、大手有料衛星放送局「Sky」の契約者に対して、オリジナルのドラマ(ならびにこれまで最も成功を収めた ITV のドラマシリーズ)を放映します。

実はITV が有料 TV 分野に進出するのは今回が初めてではなく、以前「ITV Digital」を立ち上げたものの 10 年ほど前に失敗に終わりました。そして ITV は再び同じ土俵に戻ってきました。ITV が最初に有料 TV に足を踏み入れた時も Sky の契約者にハイビジョンのプログラムを配信しましたが、今回の再進出においても 2010 年以来続く Sky とのパートナーシップを基盤としています。

それではなぜ ITV は一度失敗した有料 TV 事業に再び挑むのでしょうか? 過去 1 年間でメディアが動画から収益を上げる方法が大きく変わりました。ネット配信動画(OTT)サービスの急激な成長などを背景に、視聴者は契約からレンタル、ペイパービュー方式まで、コンテンツの視聴方法にあわせた様々な課金方法を受け入れるようになってきています。コンテンツのマネタイズ方法の多様化、ならびに広告に依存した収益構造からの脱却を狙っている従来の無料放送局は、この変化を見逃しませんでした。

同様に、オリジナルプログラムを求める消費者の意欲は衰えを知らず、定評ある契約サービス経由での新コンテンツの放映は極めて魅力的な機会となります。今回の Sky との独占的なパートナーシップは、Sky の NOW TV に関わる部分も含まれています。そのため、視聴者は ITV のこれまでのシリーズや Sky Go に保存された VOD のアーカイブにもアクセス可能で、ITV のプログラムを家庭でも移動中でも様々なデバイスで広く視聴できるようになります。

言うまでもなく、このパートナーシップは両社にメリットをもたらします。今回の案件は、人気のTVブランドやシリーズを通じたコンテンツ提供の拡大を背景に、Sky のような大手有料TV局がいかにサービスの質を高められるのかを示す格好の事例です。従来の有料 TV に代わり、契約ベースでオリジナルプログラムを充実させていくことが消費者の信頼を獲得するカギとなる中、新たな独占的コンテンツを提供可能なパートナーシップは間違いなくプラスとなります。

さらに、有料TVと無料放送の間の垣根が低くなることは両者に恩恵をもたらします。SkyとBTは未契約者にスポーツのプレミアムコンテンツを提供しており(こちらを参照)、BBC Worldwideはコンテンツの海外配信によるマネタイズを狙って新たな有料TVチャネルを3つ立ち上げる計画を発表しました

視聴者の希望は多様なデバイスで OTT サービスを享受でき、かつサービスに見合った多彩なマネタイゼーションモデルが揃っていることです。マーケット内の競争は激しさを増しています。そして、消費習慣の変化に伴って有料コンテンツモデルが成熟するにつれ、リニアな放送が発展して、オリジナルプログラム、ならびに迅速なマネタイゼーションが消費者の心をつかむ最有力手段となってきています。