バーチャル MSO の現実

バーチャル MSO の現実

有料 TV の信奉者は、買収の発表(ならびに噂)を踏まえた衛星・通信・ケーブル TV 事業界の将来予想にいて大胆な議論を繰り広げています。

さて、Intel はコンテンツのコストとなるコアドライバー付きで OnCue TV を売却しました。有料 TV 事業者にとって、価値あるコンテンツを買い取るコストとプロセスはビジネスを構成する要素の 1 つです。プログラマーは一流のコンテンツを創り出すために何百万ドルもの資金をつぎ込みますが(『ゲーム・オブ・スローンズ』の制作費は 1 エピソード当たり約 600 万ドルに上ります。まあ、デナーリスのためにドラゴンを見つけるのは簡単ではありませんが)、そのコストは有料 TV 事業者に、そして最終的には契約者に転嫁されます。結果として、OnCue 技術は有料 TV 事業者にとって合理的な選択となりそうです。

「Google をはじめとする OTT 事業者は YouTube のオリジナルコンテンツに年間 1 億ドルも費やしている」と Google が発表したことに対し、Time Warner の CEO は一昨年 11 月にこう応えました。「私たちは自社のネットワークと TV 向けの制作に年間 50 億ドルも費やしています。だから大歓迎です」。

DirecTV に今後求められるもの
DirecTVVerizon をはじめとする事業者は、有料 TV 契約者向けの標準的なセットトップボックスなしに、家庭のインターネット経由でメディアコンテンツを直接消費者に届けています。そのため、最近ではこれらの事業者が、バーチャル MSO(Multiple System Operator:複数のケーブルテレビ局を統括し運営する事業者)に近いアプローチを検討しているかもしれないという憶測が湧き上がっています。

消費者のコンテンツ アクセスにおいて最も大きく変わった点の 1 つが、モバイルの利用機会(コンテンツへのアクセスや動画視聴など)の継続的な拡大で、デスクトップを上回るケースも出てきています。こういったモバイル中心のライフスタイルは家庭と職場(あるいは家庭と休暇先)の物理的な境界を超えて拡大を続けています。モバイル型のライフスタイルが示唆するのは、自宅にいる時でさえ消費者はいつでもどこでも、どのデバイスからでもアクセスを期待していることです。

私は過去数年間 DirecTV を利用しており、ここで少し私の経験をお伝えいたします。私の利用方法は極めて理に適っていると自分では思っています。自宅には TV が 2 台あり、ともに受信機を備え、もう片方の DVR コンテンツを閲覧できます。ただ残念なことに、両方の受信機でコンテンツにアクセスするには新たなハードウェア(つまり追加のコスト)が必要です。しかしながら私の場合、勤務日の大半は SOHO しているか出張に出ています(よく飛行機や電車に乗ります)。
DirecTV で可能になったことは次の通りです。

  • ビデオ オンデマンド(VOD)コンテンツを DVR にダウンロード
  • VOD とライブコンテンツ(一部)を自宅内のデジタル スクリーンでストリーム
  • 自宅外にいる間に、ライブコンテンツ(一部)をデジタル スクリーンでストリーム
  • GenieGo 経由で)自宅外にいる間に、DVR コンテンツをデジタル スクリーンでストリーム
  • DVR コンテンツをデジタル スクリーンにダウンロードして、(GenieGo 経由で)自宅外で視聴

ライブ・VOD・DVR コンテンツへのアクセスは、自宅内外での私の動画視聴を増やしました。ただこれらのサービスは完璧ではありません。なぜなら、コンテンツの著作権の問題で自宅内外でのライブコンテンツの利用が制限されている場合があり、しかも GenieGo アプリの操作が厄介で、スマートフォンのみに最適化されているからです。

あらゆるスクリーンにコンテンツを届けようとする DirecTV の取り組みは転換期を迎えています。今拠り所なっているのがデジタルコンテンツの「配信」、つまり家庭でのブロードバンド接続です。

有料 TV サービスのバンドル化
衛星事業者はサービス提供範囲において他が羨むほどの優位性を誇ります。ただ競合となるケーブル・通信事業者は自社の有料 TV とインターネットをバンドル化して提供するケースがよくあります。

このような環境下では、既存顧客の契約解除が見込まれたとしても、それがつねに 100% の収益ロスにつながるわけではありません。というのも、TV の視聴を OTT 事業者に変えるかどうかは依然としてインターネット接続環境に左右されるからです。衛星事業者もすでにインターネット接続サービスを提供しており、またインターネットサービスは個別のサービスとして選択されるとコストがかさむ可能性が高くなります。

これらを踏まえると、DirecTV の CEO Michael White 氏が言及したように、DirecTV のストリーミング戦略は究極的には「誰かの高速道路」に左右されることになるでしょう。ただ私自身の経験から述べると、コア コンテンツの差別化要素(NFLの日曜チケットなど)を確立して、既存のデジタルサービスを拡大し、サービスをコアに訴求する機会は数多くあります。GenieGo は、ユーザー エクスペリエンスやパフォーマンス、操作性を高めるような技術的な改良がなされると、幅広い視聴者のユーザー エクスペリエンスを高める 99 ドルのサービスではなく、(オンラインとオフラインのアクセスを提供する)1 か月あたり 5 ~ 10 ドルの付加サービスとして簡単に生まれ変わるでしょう。

勝利に向けて進み続ける Verizon
有料 TV 分野では、契約者数において Comcast が依然として最大の事業者で、(RDK から SEEiT まで)継続的なイノベーションに取り組んでいます。Comcast はまた、NBCU をはじめとする放送用のプレミアムコンテンツ制作会社のオーナーとして、独自のポジションを確立しています。

ここに今、Verizon がダークホース的に浮上してきています。

Verizon が提供する FiOS Video の契約者数は 520 万人、FiOS Internet(通信速度最大 100Mbps)の契約者数は 590 万人に上ります。この数字は Comcast の 2,030 万人のインターネット契約者数、2,160 万人のケーブル契約者数に及びませんが、Verizon Wireless では 1 億 120 万人の契約者を抱え、同社の 4G LTE サービスは 3 億 300 万人が利用可能です(同社調べ)。Verizon の 4G LTE ネットワークは最速ではないかもしれないですが、Verizon が保有する AWS 帯域へのアクセスは、パフォーマンスを FiOS やケーブル事業会社の他のオプションと同等レベルにまで高める可能性があります。

Verizon は先ごろデジタル分野の upLynk と EdgeCast、そして OnCue を買収し、Hulu の買収にも名乗りを上げました(成功しませんでしたが)。これらの動きの背景にあるのは、デジタルと放送を融合しようとする戦略です。Verizon がコストをきちんと管理し、今日と同じようなコンテンツへのアクセスをキープするだけでなく、何十億ドルに上る NFL との契約といった新たなコンテンツ権利への投資を続け、ユーザー エクスペリエンスの点で何らかの「Apple マジック」を加味できれば、Verizon は点在する断片を一か所に集約できるようになります。そうすれば、有料 TV の破壊と統合、OTT、それにデジタル ライフスタイルの分野において、戦略的なプレーヤーとしての存在を確立できます。