Samsung Developers Conference 参加レポート

Samsung Developers Conference 参加レポート

先日サンフランシスコのセント フランシスで開催されたエキサイティングな開発者会議に参加しました。会議には千名を超える参加者が押し寄せ、基調講演の視聴から無料ギフト(参加者全員にタブレット、抽選で TV が当たった人も)の受け取りまで至る所がヒトで溢れ、テクニカルセッションも立ち見が出るほど盛況でした。

と言っても、これは Apple の WWDC でも Google の Google I/O でもなく、Samsung が開いた初のグローバルな Samsung Developers Conference です。

第一印象
Samsung が、あらゆるものがネットでつながる将来の「コネクティッド ライフ」向けのデジタル プラットフォームになることに力を入れていることは間違いありません。スマートフォンやタブレットがもたらすネットワーク化された生活は、TV から冷蔵庫、食洗機まであらゆるものがつながる「コネクティッド ホーム」へと広がると同社は考えています。しかし Samsung は今、これらのハードウェアを創るのみならず、新興企業の育成やイノベーションの推進に取り組む Open Innovation Center を世界各地に設けて、「ソフトウェア」である人への投資も重ねています。

今後、自宅にある家電が食生活の最新データやアイスクリームの好みを送れるようになると予測している人々はまだ多くありませんが、家庭内の相互接続はほんの始まりに過ぎないという点はほぼ確実です。

Android スマートフォンがもたらす総利益の 95% を稼ぎ毎秒 2 台の TV を販売する Samsung は Android デバイスと TV のキングだと広く認識されています。ただ、このデジタル分野の競争にあぐらをかき続けることはできません。Nokia や RIM の二の舞になる可能性があるからです。

ただ Samsung がこの戦略を推し進めるにあたり、Android の環境とデジタルライフに関する疑問が湧き出てきます。

さらなる断片化?
Samsung は、ペン入力や KNOX(企業向けセキュリティ/デバイス管理)から、マルチスクリーン対応や AllShare でのメディア管理、ジェスチャ・動作の認識機能まで、スマートフォンやタブレット デバイス向けの新機能を相次いで導入しています。ただこれらの機能は Samsung の独自 API で、同社特有の Android バージョンが生まれてしまう可能性も否めません。

この Samsung の動きを Amazon Kindle の Android 兼用化になぞらえる方がいるかもしれませんが、ここで私たちにもたらされるのは Android ではなく、Samsung アプリの体験です。ユーザの認識の上でも、市場シェアの点でも Android と Samsung は切り離せない存在ですが、今回の Samsung の動きは Android のエコシステムの中に新たな断片化を生み出してしまう可能性を秘めています。これが進むと、パブリッシャは Android のプラットフォームやバージョンだけでなく、デバイスも選択する必要に迫られます。

Samsung 製 TV がファーストスクリーンになれるか?
ソフトウェア開発キット(SDK)を活用することで、モバイル デバイスや TV など、AllShare(DLNA)を使用したマルチスクリーンでのメディア共有が可能になります。そのため会議では、ファーストスクリーンの 1 つ(唯一ではない)としての TV にフォーカスしたデモとセッションが数多く開催されました。TV 向けアプリの開発プロセスも大変興味深いモノでした。VirtualBox と Eclipse ベースの統合された開発環境下における、クロスプラットフォームのエミュレータ(および実際のハードウェア デバイスの遠隔テスト)を提供することで、Samsung は開発および配信プロセスの簡素化に向けて取り組んでいます。

アプリは HTML5 環境で開発できます(Webkit を使用)。加えて基調講演(ならびに Unity からの講演や統合されたスマートフォンやコントローラの動画)から、同社がゲーム制作に重点的に取り組んでいることが垣間見れました。ただブレークアウト セッションでは、TV のパフォーマンス向上と最適化に向けた PPAPI(Pepper PlugIn API)と PnaCl(Portable Native Client)の使用についての深堀りがなされました。

また Samsung は Evolution Kit についても言及しました。これはペーパーバックサイズのハードウェアで、通常の TV に取り付けることで、TV を最新機能が搭載されたスマート TV に生まれ変わらせます。ただこのデバイスは小さくも、安くもなく(定価 299 ドル)、かつ Samsung 製 TV にしか対応していません。

このようなアップグレード機能、ならびに Smooth Streaming や MPEG-DASH 向けサポートがありつつも、Apple TV や Chromecast ではなく、この TV モデルが果たして唯一の「ファーストスクリーン」になれるかという疑問は残ります。毎秒 2 台の TV を売る Samsung にとっては、もちろん「唯一」の選択肢となるに違いありません。

ソーシャルは、実はアンチ・ソーシャル?
基調講演では、第三者(ともにプラットフォームとアプリ開発者)が推進しているユーザ エクスペリエンスに関するデモも披露されました。内容はツイートや近況のアップデート、投票などのモバイル コンテンツを TV に組み込んだモバイル エクスペリエンスの拡充に関するモノでした。

このように TV を単なる外部モニタとして使用すると、ソーシャル エクスペリエンス(ライブイベントのシーズン最終回の視聴など)を効果的に個人的な体験に変えることができます。ただ、NFL の強豪ラムズが 4 回目の攻撃で残りわずか数秒でゴールを狙っている時に、友人が作ったチーズディップの写真をわざわざ見たいと思うでしょうか?

複雑かシンプルか?
議論の中核にあるのは、Samsung が進めるイノベーションに、パブリッシャとユーザは今後長期的にどのように対応していくのかという点です。Apple がさらなるシンプル化に舵を切るとみられるなか、自社の Android 環境の再定義・進化を続ける Samsung は、デバイスや機能(AllShare や KNOX、マルチスクリーン、動作、ペン入力など)のエコシステムを、より複雑な方向へ発達させそうです。

どちらのアプローチも成功する可能性を秘めていますが、ともに今後の行く末は断片化され、険しいものとなるでしょう。