iOS 7 - One More Thing...

iOS 7 - One More Thing...

Apple が何か発表する時には、たえず事前に様々な憶測が飛び交いワクワクします。消費者や業界関係者、競合各社はいつも、今回の "one more thing" が何であるかを予測、期待、そして時には夢想してきました。先の iOS 7 の発表・リリース以降、主に世間を賑わせているのはカラーバリエーションや株価、そしてユーザ インタフェースとしての視覚的なスキューモーフィズムの廃止に集中しています。

一方パブリッシャの皆さんには、あまり注目されていませんが、"Appのバックグラウンド更新" と "iBeacon" という 2 つの機能に目を向けることをお勧めします。

App のバックグラウンド更新
iOS7 のリリースにあわせて、ひっそりと加わった新機能の 1 つが App のバックグラウンド更新です。マルチタスク関連機能で、この App のバックグラウンド更新を通じて、ユーザはアプリごとに ON / OFF を設定できるようになります。

デスクトップ(通常 Flash)、モバイルウェブ、あるいはネイティブ アプリ上での動画プレイバック環境を見直す際、パブリッシャは動画の起動に注目し、最初の動画フレームが表示されるまでの時間をできるだけ短くしたいと望む場合がよくあります。このプロセスで重要となってくるのは、プレーヤと付属物(スタイリング/クローム、プラグインなど)、ならびに関連するメタデータ(静止画など)や動画ファイル(HLS 用 m3u8 マニフェスト)のロード時間を測定(そして最小化)することです。

最近の UMass と Akamai の調査では、起動時間が視聴エクスペリエンスに与える影響について深堀りしているほか、QoE(エクスペリエンスの質)に関する私の以前のブログでも、この点を動画視聴エクスペリエンスに絡めて考察しました。App のバックグラウンド更新でいうと、動画視聴時のアプリ エクスペリエンスということになります。

デジタル消費者に辛抱強さはつゆほどもありません。もともと業界全体で、キャッシングによるデスクトップ ブラウザ環境の最適化を目指しており、いまではクライアント サイドの cookie から Open Connect でのピアリングまで格段に洗練されたコンテンツ配信能力を備えています。

アプリ レベルでは、キャッシュする情報(オフライン使用、あるいは二次的な要求を減らすため)とキャッシュしない情報(コンテンツのタイムリーさの改善、またはセキュリティ対策のため)のバランスを開発者は取っています。多くのアプリは起動時、あるいは特定コンテンツへのアクセス時に、コンテンツをリフレッシュするよう初期設定されています。同期要求は連続的な遅延につながり、非同期要求は多くの場合、ネットワーク コンテンションを引き起こします。ユーザ エクスペリエンスの一要素として期待されているように、コンテンツのアップデートは高速回線上で、更新された分のみ、ユーザに支障が出ないように実施されるのが理想です。3G 接続上で、連続的にコンテンツのアップデートが行われると、アップデート中を示す回転するアイコンが視聴者の目に入り、最悪の場合、ユーザは別のアプリに移ってしまいます。

App のバックグラウンド更新を活用することで、パブリッシャはコンテンツ リフレッシュのタイミングとその方法をより的確に管理できるようになります。これにより、アプリの起動からコンテンツのプレイバックまで、ユーザの待機時間の最小化を図りながら、タイムリーなコンテンツ アクセスが可能になります。

iBeacon
隠れミッキーを探したことがない方は、テーマパーク来園者のエンゲージメント向上のために Disney が導入した「MagicBand」と「"Glow with the Show" ハット」という、2 つの新たな位置認識デバイスについてご存じないかもしれません。"Glow with the Show" ハットは、耳の部分が LED でできたミッキーの帽子で、ショーにあわせて耳の光の色が変化します。赤外線で特定の場所にある帽子に局所的にコマンドを送ると、その場所にある帽子に個人やグループ単位でライティング効果を生じさせることができます。この帽子はパーク内の特定の場所で反応し、近くにある帽子と連動させることもできます。

これがどう iBeacon と関係しているのでしょうか? iOS 7 に搭載された iBeacon は Bluetooth Low Energy(BLE)を使った近距離無線通信技術です。BLE はデータ転送可能範囲が NFC よりも長く(最大 50m)、GPS よりも広い(インドアでも可)のが特徴です。パブリッシャの皆さんはこの iBeacon を単なるおもちゃだと一笑に付してはいけません。Disney が光り輝くミッキーの耳を使って、来園者に忘れられない思い出を刻み込むのと同じように、この近距離無線通信を使ったらどのようなユニークなエンゲージメントをつくり上げることができるのか考えてみることをお勧めします。文字通りのモバイル オーディエンスに関連したものがよいでしょう。

いくつか例を紹介します。

  • 美術館で、展示されている絵画や彫刻作品の前に来ると、その作品を手がけたアーティストや作品の詳細が自動的に iPhone 上に表示される。科学館では、世界的天文学者の故カール・セーガン氏とのインタビューや、コマ撮り動画の形式でショーケースの崩れる模様を紹介し、来館者をびっくりさせる。
  • 動物園や水族館では、展示スペースにいる動物や水生動物に関する詳細情報を iPhone 上に表示する。米カリフォルニア州にあるモントレー ベイ水族館であれば、来館者に人気者のケープペンギンを直に見られるようにしたり、ジェンツーペンギンやヒゲペンギン、イワトビペンギンの様子をライブ ストリーミング配信したりする。
  • 米住宅リフォーム小売チェーンの Home Depot で、オプションの多さに圧倒された買い物客が様々なガイドにアクセスできるようにする。同様に日用品店で、スポンサー広告入りのビデオガイドで消費者を誘導する。クーポンをおまけにつけることもできる。
  • Hugo Boss が、小売店を双方向のファンションショー会場に変える。ロサンゼルス国際空港の各出発ゲートで、フライトの目的地にあるスターウッドホテルを紹介する。
  • 映画館が、映画の予告編や特大サイズのポップコーン割引券を配信して、映画をプロモーションする。
  • ニューヨークのブロードウェイを歩いている iPhone ユーザに、Starbucks から季節ごとの新フレーバーを紹介する動画、PUMA から新 evoSPEED のコマーシャル動画を流す。WWE ストアでの買い物客にプロレスラー Triple H の叫び声を送ったり、GameSpot から「Grand Theft Auto V」ゲームの限定動画を流したり、MTV の近くに来たら Katy Perry の最新動画のさわりの部分を配信したりする。

iOS 7 で最初に一番の注目を集めるのは、カラバリやインタフェースかもしれませんが、モバイル動画エクスペリエンスの向上や消費活動の活発化、マネタイゼーションの最大化など、パブリッシャの皆さんに役立つ新たなツールも搭載されています。