テレビ革命に寄与した 6 つのトレンド

消費者の好みや視聴方法の激変に伴い、従来のテレビ ビジネス モデルが急速に変化しています。1 月には、過去 10 年間にテレビの視聴者数が 50% 減少したという報告が、Morgan Stanley からありました。そして今月初めには、Participant Media の Pivot Network が、860 万人のミレニアム世代がブロードバンドでしか視聴しないという新たな調査結果を発表しました。ComScore によると、アメリカ人は今年 5 月に 410 億本近くのオンライン コンテンツ動画を視聴したことがわかりました。このような変化に伴い、各種ネットワークやスタジオがビジネス戦略の変更を進めており、オリジナルの番組の画像再処理や新しい配信モデル模索によって、独自の方法で消費者のニーズに対応しようとしています。テレビ業界に変化をもたらしているトレンドはいくつかありますが、主なもの 6 つ(5 つに絞れなかったので)を以下に挙げます。この種のトレンドはテレビ番組に大きな影響を及ぼしていると思われるため、今後予想される大規模な新規投資、イノベーション、創造力、価値創出の指針として参考になさってください。

1. クリエイティブな契約 
消費者に直接配信するオンライン動画チャネル(Netflix、Amazon、YouTube など)は、クリエイティブな契約のための新しいビジネス チャンスを提供しています。その結果、オリジナルのテレビ番組のビジネス チャンスが拡大し、ネットワークとスタジオの両方にとって喜ばしい状況が生まれます。大手放送網でも、従来型とオンライン「ウィンドウイング」機能の新しい組み合わせをテストしています。基本的には、ライセンス契約を遵守するために各種フォーマットや配信方法でスケジュールに従ってコンテンツをリリースしながら、もう一方では一定の時間帯に特定視聴者向けに付加価値の高いコンテンツを提供するという方法です。たとえば、放送会社はスタジオと独占契約を結び、「最初の」有料ウィンドウでの放映権を獲得することで、テレビや自社の関連するストリーミング サービスで新たなエンタテインメント コンテンツを放映するための収入源が得られます。その後 2 回目の有料放送を行い、Netflix などのメディアで独占的に特定コンテンツをストリーム配信します。このように従来型とオンライン ウィンドウイングを併用することで、最初にテレビ放映したコンテンツの寿命を延ばせるだけでなく、十分に活用されていなかったオリジナル番組に新たな命を吹き込むことができます。

AMC の「THE KILLING/キリング」は高い視聴率を誇っていた番組ですが、シーズン最後になってファンの期待を裏切ってしまい、視聴者離れが進み、番組終了を余儀なくされかけていました。AMC のプレジデント兼ゼネラル マネージャである Charlie Collier 氏は、LinkedIn の投稿で、この番組自体は素晴らしいので何とか継続したいが、よほど高い視聴率が取れなければ、高額なコストに見合わないと語っていました。そこで思い切って Netflix と契約を結び、アクセラレーテッド ウィンドウでの「THE KILLING」のストリーミング ビデオ オンデマンド(SVOD)権利を提供することで、従来型のテレビでの視聴者数は少なくても、番組自体を存続させることがコスト面で可能になったのです。また、Collier 氏はケーブル会社が従来型のビデオ オンデマンド(VOD)の「優先権」を維持できるようにして、良好な関係も継続することができました。その一方で、Netflix が一般の放送網、トランザクション VOD 配信より先に、顧客に有料コンテンツを独占的に提供できるように配慮しました。一部のケーブル会社がこのような環境の変化に抵抗したとしても、この流れを止めることはできないでしょう。

2. OTT がオリジナル コンテンツ制作に参入
現在のウィンドウイングの定義は魅力的な進化を意味していますが、モバイル環境が登場してからしばらくたっています。純粋な OTT(over-the-top:オーバーザトップ)プロバイダが、オリジナル コンテンツや独占ストリーミング契約に多額の投資を行うようになったのはここ数年のことです。たとえば「アレステッド・ディベロプメント(ブル~ス一家は大暴走!)」はファンも多いアメリカのテレビ番組ですが、供給元の FOX では従来型の放送では十分な収益が得られないでいました。テレビでの最終回放送から 7 年経過後の現在、Netflix 上で「アレステッド・ディベロプメント」の再配信と新シリーズの配信が行われています。現在エンタテイんメント業界では、数は少なくても根強いファンがいる場合は、打ち切りになった番組でもさらにクリエイティブな進化を遂げる可能性があります。

オリジナルでクリエイティブな番組を最初にオンライン配信することで、多額の収益が得られる可能性が高くなるため、多くの戦略が立てられています。そして大手企業は多額の投資を行っています。Amazon は、Amazon Prime で 5 つのオリジナル シリーズを独占的にパイロット配信することを先日発表しました。いずれのシリーズも、クラウドソーシング コンテンツ選定プロセスで発掘したものです。Hulu Plus の加入者も間もなく、新しいオリジナル番組を多数利用できるようになります。DreamWorks も、Netflix との契約を好感してケーブルテレビ会社と協力関係を結ぶ予定だと発表しました。そう遠くない将来、従来型のテレビよりもコンテンツの数が増えることになるでしょう

3. 奥深さが売り
放送網やスタジオが新しい配信チャネルによって独自のビジネス チャンス獲得を模索している一方で、従来型のテレビ業界は視聴者とのつながりをこれまでになく強固で奥深いものにする新たな配信モデルを開始しています。コンテンツ制作会社は、消費者の関心が高い分野に重点的に参入しています。そして今、私達がほとんどの時間を費やしているのが、モバイル デバイスです。D11 でのプレゼンテーションで、Kleiner Perkins Caufield & Byers のゼネラル パートナである Mary Meeker 氏は、毎年 1.5 倍というモバイル トラフィックの急増に触れました。それだけでなく、タブレットとモバイル デバイスは今後も増加し、2015 年までには PC の台数をしのぐことが予想されています。また、消費者によるネイティブ アプリの利用時間も増えています。ネイティブ アプリによって、視聴率の向上、リマインダの送信、視聴者コミュニティへの関連コンテンツ提供といったビジネス チャンスが大幅に拡大します。今では最初に視聴する画面が、スマートフォンやタブレットになっています。

そういった状況の中、動画がネイティブ アプリの最後の砦になっており、ネイティブ アプリ全体が魅力的な収入源となりました。たとえば Angry Birds シリーズのクリエータである Rovio は、オリジナルの Angry Birds キャラクタを使って、動画シリーズ Angry Birds Toons を開発しました。このアプリ専用番組によって、視聴者はコネクティッド TV、スマートフォン、タブレットで、オリジナルの動画エンタテインメントにオンデマンドでアクセスできます。映画のセリフを引用すれば、オンライン環境では「if you build it, they will come」―魅力的なものを作れば、視聴者はついて来る― という考え方があるのです(つまり、Rovio のように、インターネット上で固定的な視聴者層を確保できれば、後は視聴者が自然に付いてくるということ)。事実、アプリによって従来のテレビ番組制作会社以外でも、市場に「参入」しやすくなりました。Rovio はオリジナルの「テレビ」番組への投資によってブロードキャスト品質の漫画シリーズを制作しましたが、これは今後予想されるさらに大きなトレンドを示唆しています。テレビのエコスシステムの枠を超えたブランドが、多額の投資を行い、クリエイティブな開発機会を提供しています。

これに関連するもう 1 つの重要な鍵は、デュアル スクリーン アプリです。主として iOS(Xbox One、Comcast X2、その他も後続の予定)が推進しているデュアル スクリーン アプリは、視聴エクスペリエンスを強化する補足コンテンツや機能を提供することで視聴者の関心を高めるもので、テレビ番組制作会社にとっては新たな市場機会となります。DIAL は YouTube と Netflix が共同開発したプロトコルで、視聴者はプライマリ スクリーンであるテレビ画面で、モバイル デバイス上の動画アプリを起動することができます。これによって、デバイス上のアプリとテレビ上のアプリ間のインタラクションが簡単になります。他にも Miracast によって、承認済みのデバイスから他のディスプレイにミラーリングしたイメージを送信することができます。従来型のテレビ視聴エクスペリエンスでは、番組との深い関わりがますます増えることになるでしょう。これを可能にするのが、モバイル デバイスとテレビ画面のインタープレイ機能です。

4. ソーシャルの台頭
ソーシャル ネットワークもテレビ視聴エクスペリエンスと、マルチスクリーン コンテンツのマネタイゼーションの可能性を激変させる要因になっています。ABC ファミリーで非常に人気のある 10 代向けのドラマ、「Pretty Little Liars/プリティ・リトル・ライアーズ」の制作者へのインタビューが先日 Wall Street Journal 誌に掲載されていました。その中で、ソーシャル メディアでの番組に対する視聴者の反応が、制作プロセスにも影響を及ぼしているとのコメントがありました。Twitter に投稿した考えや要望が、特定のキャラクタやセリフを変えてしまうなんて、『choose your own adventure(きみならどうする?)』と呼ばれる、読む側が物語の進行を決める、子供向けゲームブックの現代版のような感じです。リアルタイムで Twitter の会話に参加するためだけに、テレビ番組を視聴しているようだとも分析しています。テレビ視聴に関連する熱心なソーシャル ネットワーク アクティビティには、広告のビジネス チャンスがあると考えた Twitter は、先ごろ Twitter Amplify を発表しました。これにより、視聴者が特定の番組に関するツイートを投稿すると、関連する動画コンテンツを流して直接広告を配信できるようになります。これは一種の販促用ツイートのようなものですが、動画によってその効果が高まります。CM 中に Twitter を使用している人はあえて広告を見ようとはしないので、この種の広告付きソーシャル ネットワークによってブランドの広告機会が増え、マネタイゼーション機会をとらえることができます。

5. ブランド エクスペリエンスの向上
新たな広告機会を提供しているのは Twitter だけではありません。視聴者の間では従来型の広告を避ける傾向が強まっているため、ここ数年の間に多数の新興企業が登場し、パブリッシャがこのような状況に対応できるようにサポートするようになりました。たとえば SocialWire は、Facebook 向けに動的で「面白い」製品広告を開発している企業です。YuMeTremor VideoAdap.tv なども、オンライン広告とモバイル広告の配信で大きな成功を収めています。さらに、IAB ではオンライン動画広告標準を拡大して、クリエイティビティの強化と新規フォーマットの導入促進を行っています。同社は先ごろ、デジタル動画広告のインタラクティビティを向上するために、「Digital Video Rising Stars」と呼ばれる広告ユニット標準を発表しました。

このような「未来型広告」は各種フォーマットの変化に左右されますが、私達が慣れ親しんだ従来の販促方法とは異なります。ブランド各社は広告フォーマットだけでなく、コンテンツ タイプについても現在検討中です。特にブランド訴求力が高く、パブリッシャ独自のルック & フィールとも融合可能なネイティブ動画広告は人気を博していますが、異論もあります。BuzzFeed と CNN の間で先日締結されたネイティブ広告に関する契約は、今後のデジタル広告におけるネイティブ動画の重要性を如実に表したものです。つまりブランド各社はネイティブ動画によってインテリジェントなターゲティングを行い、視聴者にとって興味や関心のわくような、それでいて押しつけがましくないコンテンツを提供し、新たなビジネス チャンスを獲得することができるのです。ブランド各社は現状維持が不可能なことを理解しており、消費者の関心を集めたいと考えているため、先回りすることで優位に立てます。

Hulu は、最後まで視聴された広告に対してのみ料金を課すことも発表しました。広告制作コストを考えると、広告主は課金されても、最後まで視聴してもらいたいと考えるでしょう。この種のマネタイゼーション戦略では、的を絞って、視聴者にとって魅力的で、関連性がある、クリエイティブな広告を配信する必要があります。

6. 認証テレビ視聴
認証: これは消費者にとっては小さな変化ですが、テレビ業界にとっては大きな変化です。古いことわざにもあるように、「いくらうわべがかわっても、本質は変わりません」。配信、デバイス、コンテンツ配信、アプリ エクスペリエンス、広告のプロセスは確かに変化していますが、ネットワークとスタジオの間には、数十億ドル規模のエコシステムが相変わらず存在しています。認証テレビ視聴(TV Everywhere、または略して TVE と呼ばれる)は、ビジネスを保護しながら、より広範な利用を可能にします。TVE は消費者による選択と制御という新しい時代への橋渡しを行います。基本的には認証によって、視聴者は同じコンテンツの内容を自宅だけでなく、プラットフォーム上のあらゆる場所、またはありとあらゆるモバイル デバイスで楽しむことができます。お気に入りの番組を視聴するためには、ケーブルや衛星サービスへの加入も引き続き必要です。したがって、視聴者とケーブル/衛星サービス プロバイダの両方にとってメリットがあるのです。TVE はテレビ業界の将来を担っており、消費者とコンテンツ プロバイダはすでにこれを容認、または少なくともテレビが生き残るためには必要な存在だと認識しています。事実、Adobe が発表したデータによると、TVE 動画コンテンツは 2012 年中に前年比 12 倍の伸びを記録しました。放送局も補助的な TVE エクスペリエンスを次々と発表しており、たとえば A&E からは、Android プラットフォーム用のフルエピソード ストリーミング アプリが新たに提供されたばかりです。認証テレビ視聴によって、マルチスクリーン アプリの新たな価値が見い出されるようになりました。マルチスクリーン アプリは、スマートフォンやタブレットの急増に伴い今後ますます普及するでしょう。

テレビは今後も進化し続けますが、これは喜ばしいことです。テレビ ビジネス モデルは変化し続け、消費者に直接コンテンツを届けることができる手段が増えることで、柔軟な方法で番組が提供できるようになるでしょう。Netflix の CEO である Reed Hastings 氏による記事では、現在の使用環境に影響を及ぼしている要因を考慮しつつ、テレビの将来を明確に予測しています。そして同社の取り分を決めるのは、コンテンツの品質ということになるでしょう。何より大切なのはアプリです。オンライン動画ストリーミングは、メディア企業にとって魅力的なビジネスというだけではなく、これを導入しなければ生き残れないのです。従来のテレビ視聴習慣とデバイス環境は、すでに後戻りできないほど変化していることが明らかです。しかし上記のようなトレンドや変化が示すように、業界は大急ぎで変化を受け入れようとしており、そのパワーが開発と成長の新たな時代を先導しています。